ScrapboxDropbox PaperもビジネスWikiとでもいう範疇のアプリです。どちらのアプリもチームでドキュメントを共有し、共同で編集を行うためのツールですが、用途によっては得意とする点と不得意とする点があります。

Scrapboxの良い点

Scrapboxの良い点は何と言っても基本的に無料でほぼ全ての機能が使えることです。社内やチーム内で今すぐ簡単に情報共有をしたいのであればScrapboxを勧めます。
このような情報共有システムで重要なのは、チーム(または全社員)が特別なインストラクションも必要なしにすぐ使えることです。その点、Scrapboxは+ボタンをクリックして新規ドキュメントを作成するだけで文書入力をすることができます。また画像の配置も、画像をドラッグ&ドロップするだけです。

Scrapboxが不足している点

シンプルな作りのScrapboxですが、ドキュメントの共有はプロジェクト単位でしかできません。パソコンで言えばフォルダを共有して、フォルダ内の全文書を共有するようなものです。社内や部門であれば相手が明確なのでこのような方法での共有管理も可能ですが、問題はクライアントごとに情報共有をしたい場合は、ドキュメント単位での共有ができないことがネックになります。
またScrapboxにはチャット機能やコメント機能が実装されていません。したがって、誰がどこをどう直したのかの履歴を確認したり、相談や指示などといったことは他の手段で行わなければなりません。

Dropbox Paperの良い点

Dropbox Paperはファイル共有アプリのDropboxが提供するビジネスWikiです。Dropbox PaperではScrapoxで不足しているドキュメント毎のファイル共有管理機能や、コミュニケーション機能が実装しています。
これはわが社のように複数の企業と同時にプロジェクトを行うような場合はとても重宝します。
例えば、プロジェクトフォルダは社内全員で共有しておき、フォルダ内のAファイルはA社と、BファイルはB社と共有するといったことが可能です。
さすがにファイル共有システムを開発している会社だけあった、この辺りの共有管理のスムーズさは特筆すべき点です。特に社外と情報を共有する場合、会員登録やログインでつまづくとそこでダメになってしまうケースが多いのですが、Dropboxの共有はドキュメント毎に共有リンクを生成することが可能なので、社外共有でつまづいたことがありません。

DropboxもMarkdown風のタグを使うことができますが、タグを入力するよりもUIで指定することが前提となっています。

Dropbox Paperが不足している点

Dropbox Paperは基本的に有料サービスです。ひとり2GBまでは無料ですが、チーム内の誰かが2GBを超えてしまったら有料システムに乗り換えなければなりません。基本的に一人$9.99/月なので10人いれば$100、20人であれば$200が毎月課金されます。
またDropbox Paperは1ファイル内の画像が膨大になってくると、日本語入力が明らかに重くなってきます。大量の画像がある場合はファイルを分けることも考えた方が良いでしょう。

他の選択肢

実はScrapbox/Droboxの採用と同時にGoogle DocsとQuipも検討しました。

Google Docs

ドキュメントの共有という点ではもともとGoogle Docsの方が最初にあったのですが、どういうわけか前者でドキュメントにアクセスをして共有するという使い方がうまく行きません。
私はGoogle DocsのUIがMS Wordに似ていることが原因ではないかと思います。
コメント機能やG Suitesとの連動性、様々なエクステンションで追加できる機能と、機能的には優れているのですが、全社/チーム情報ツールとしては採用外です。

Quip

QuipはSalesforceチームが開発したビジネスWikiで、この中ではDropbox Paperとほぼコンセプトが重なるアプリです。料金もほぼ同じ。しかしファイル共有との統合を考えるとDropboxの方が良いかなと思います。

両方のシステムに求めたい点

ScrapboxもDropbox PaperもAPIの公開はまだまだこれからという感じです。特にZapierと連動してくれれば、さらに使い勝手が上がるはずです。
例えば新規プロジェクトをGoogle Sheets上に作成したときに、同名のファイルをScrapbox/Dropbox上に作成したり、Dropbox/Scrapbox上に作成したブログの原稿をWordPressで公開するなどの自動化が可能になれば良いと思います。

まとめ

ScrapboxとDropboxはビジネスWikiという共通のフィールドにありながら、お互い目指している方向性やコンセプトが微妙に異なっています。
全社共有ですぐに使いたいのならScrapbox、ファイルごとにきめ細やかな共有管理を行いたいのであればDropboxという選択になります。
わが社ではマニュアルやトレーニングコンテンツはScrapboxに、プロジェクト管理や議事録はDropbox Paperにと使い分けています。
Scrapboxの方が全体として一つのKnowledge データベースを作るということには向いていますが、確実にコミュニケーションを取りながら情報共有するのであればDropboxに軍配が上がります。